第五章

そういうことか。
私は手元の表に右上から縦書きで、いろは唄を書いていった。「……ゑひもせすん」と埋めていき、七・七だけ空白の表が完成したところで、これは明治以降使われた「座標式換字暗号」と酷似していると気がついた。
しかし隠された地下室で、しかも暗号化して書かれている情報ということは、相当重要な事項なのだろう。
先ほど作り上げた座標式換字暗号表を参考に、壁に書かれた漢数字を解読していった。

……壁には「四面塔」伝説について書かれていた。コラム欄取材メモにも書かれていたが、池袋にある有名な怪異の話なので、私も以前から知っていた。

四面塔という塔の付近やそれに関わった人が次々と死ぬ……という話。

どうしてこんなところに書かれているんだ?
そういえば、四面塔はこの物件の近くに建てられていたんだったか……。

……よし。
一旦奥に進み、探索してしまおう。
暗号が1つ解けたことによって、恐怖心よりも好奇心が勝っていた。
この物件の真実に、少しでも近づきたい。
そんな思いで、私は地下室の奥へ奥へと足を進めていった。足元がかろうじて見える程度の心もとない光だけを頼りに、歩みを進める。
異臭も強烈になっていく。この奥には何が存在しているのだろうか……?
……と、コツンと何かが足に当たった。
これは……?
暗闇の中、目の前に現れたそれを手探りで確認する。
これは……石造りの……祭壇か?
高さは2メートルほどと言ったところか?天井すれすれの高さである。
ぐるりと一周見てみると、何かが上の方に供えられていることが分かった。じっと目を凝らす。
あれは……折りたたまれた紙と……杯?
私は手を伸ばすと、折りたたまれた紙を掴み取り、そのまま足元の光で照らしてみた。
これは……どうやら地下室の間取りのようだ。

【箱から 弐 の資料を取り出して開いてください】

大きさを考えてもちょうど7平米ほど。
説明書きに書かれていた「全体で45.5平米」というのは、やはり1階と地下室を合わせてのことだったようだ。
それにしてもこの地図は実に簡易的だ。
この赤丸と階段の位置以外、特に重要そうな情報は描かれていない。

先ほど地下室を歩いた感じ、祭壇や柱以外は何も無いような空間だったし……赤丸はこの祭壇を指し示していると考えて間違いなさそうだ。

いくつかある正方形は柱の位置らしかった。

杯の方も確認してみようか。
どうやら杯は天井に近い位置で、祭壇に固定されているようだった。
グッと背伸びをして手で探ってみる。
このヒンヤリとした感触は……金属だろうか?
さて……問題は中身である。
異臭の正体は、どうやらこれのようだった。
心を落ち着かせ、祭壇をよじ登る。
私の飽くなき探究心が、私をつき動かした。
首を懸命に伸ばし、杯の中を隙間から覗き込む。
そこには……漆黒の空間があった。
いや……よく見ると赤黒い……これは何だ?
中をよく見る。杯の内側には何か赤黒い液体が入っていたような痕跡があった。
「……この正体は……」
やけに鉄臭いそれを見て、非常に嫌な予感がした。

【この正体を推理する】
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