あなたは⼤切なはずの記憶を失ってはいないだろうか?
近頃 豊島区界隈で“忘れさせ屋”と⾔う存在が若者の中で噂になっているという。“忘れさせ屋”は依頼主もしくは依頼主が望む相⼿の特定の記憶を消すことができるらしいのだ。と⾔っても警察が動くような事件性はないようで、犯罪者というわけではないらしい。こうした噂が出回っているものの“忘れさせ屋”の素性や居場所についての⼿がかりは未だ掴めていない。
そんな中、かつて“忘れさせ屋”に記憶を消されたが、思い出すことに成功したと⾔う⼈物とコンタクトを取ることに成功し、インタビューにこぎつけた。今回インタビューに答えてくれたのはAさん(20代⼥性)だ。
記者:なぜAさんは、“忘れさせ屋”に記憶を消されたのでしょうか?
Aさん:⾼校⽣の頃付き合っていた彼が“忘れさせ屋”に依頼したみたいです。彼とは⼤きな喧嘩も無く、幸せな⽇々を過ごしていたのですが、ある時彼の⽗親が亡くなったそうです。彼は家の⽣活を⽀えるために働き始める必要があり、そのためには⾼校を辞めなければいけなく、そんな状況の⾃分が彼⼥を幸せにできないと思ったみたいです。今後私が楽しく学校⽣活を送り、いい⼈と巡り合って幸せになってほしい。彼はそこで彼⾃⾝が私の新たな幸せの邪魔にならないように“忘れさせ屋”に私から彼の記憶を消すように依頼したんだそうです。
記者:どうして記憶を消されたことに気づけたのでしょうか。
A さん:いつからか⼼にポッカリと⽳が開き、なんとも⾔えない寂しさを感じていました。そんな時に昔の写真を⾒返していたら、ふとある集合写真に⽬が留まりました。そこに写る⼀⼈の男性にとても懐かしさを感じたんです。名前も思い出せないのに。同じ写真に写っていた友⼈に久しぶりに連絡を取り、写真の中の男性について「何か知らない?」って質問したんです。友⼈は私が記憶を失っていることに驚きながらも。私と彼が恋⼈関係であったことを教えてくれました。最初はそんな記憶ないし驚いたのですが、⾃分の感じた懐かしさと、友⼈の証⾔から⾃分の記憶に疑問を持ち始めました。それが記憶を消されたのでは、と気づくきっかけです。
記者:どうやって記憶を取り戻したのですか。
Aさん:先ほどの友⼈に彼の連絡先を聞いて連絡を取りました。彼はとても驚いていたものの、⼆⼈で会うことが決まり私の記憶を取り戻す協⼒をしてくれることになりました。
記者:彼が“忘れさせ屋”に記憶を消す依頼をしたのに、取り戻すのに協⼒してくれたのですね。
Aさん:はい。彼の中で後悔もあったようです。でも家のために頑張り続けてやっと落ち着いてきたところに私からの連絡が来たみたいで居ても⽴っても居られなかったらそうです。記憶を取り戻すことに協⼒的でした。すぐに会う約束をすることができました。詳しいことは会ったときに話すからって。
記者:消えたはずの記憶がどうして微かながら残っていたのでしょう。
A さん:どうやら⾃分の意思で消した記憶ではないので完全に消し去ることができなかったみたいです。私が彼の写真を⾒て懐かしく感じたことはそれが原因みたいですね。私が本来忘れたくなかった⼤切な記憶ということも関係しているみたいです。
記者:彼との記憶を思い出すまでの過程を詳しくお話しいただけますか。
Aさん:彼との記憶、思い出は最初全くありませんでした。忘れさせ屋さんが教えてくれた通りに、部屋にこもってレコードプレイヤーの音声を聞きながら、少しずつ記憶を取り戻していきました。出会い、⼀緒に⾏った場所、私が彼の部活の応援にサプライズで⾏ったこと、⽔族館でお揃いのキーホルダーを買ったこととか、とにかくたくさん。そんな感じで彼と⼀緒に過ごし話すことで徐々に思い出すことができました。
記者:記憶を取り戻したことで後悔したことはありますか。
Aさん:いえ、むしろ記憶を取り戻せてよかったです。彼とのコミュニケーションを通して、お互いの存在と⼆⼈での思い出がどれだけ⼤切なものだったか気づくことができました。回り道をしてしまいましたが、本当に⼤切なものに気づくきっかけになったので記憶を消されたことも、取り戻したことも後悔していません。彼は私を幸せにできないと思っていたみたいですが、私は⼆⼈で⼀緒にいることが何よりも幸せだと伝え、これからまた⼀緒にいようと⾔ってもらえました。
記者:最後に“忘れさせ屋”についてお聞きしたいのですが、素性や居場所について何かご存
知ですか。
Aさん:私も彼も“忘れさせ屋”の⾒た⽬やどこであったかなどは⼀切覚えていません。きっ
と忘れさせ屋さんに忘れさせられたんだと思います。
以上が今回のインタビューの内容だ。
お互いの存在の⼤切さを再確認したA さんたちはよりを戻し、再び同じ道を歩き始めたそ
うだ。“忘れさせ屋”についての具体的な情報を得ることはできなかったものの、貴重な話を
聞くことができた。記憶を消されるという事は実際に起きているらしい。誰のどんな記憶が
消されているかわからない。“忘れさせ屋”という謎の存在。彼?彼⼥?性別も個⼈なのか団
体なのかもわからない。忘れたい記憶の1つや2つは誰もが持っているだろう。しかし依頼
されれば⼤切な記憶さえも忘れさせてしまう、そんなことが許されるのだろうか。
⼤切な記憶を消されてしまっているのはあなたかも…
我々ミステリータイムズ社は引き続き“忘れさせ屋”についての調査を続ける。続報を待
て!!
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謎を追うため噂のホテルへと宿泊することとなったあなたたち。
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